小さい頃に習うこと、大きくなってわかること
その日、あたしは錦糸町駅のホームにいた。
清澄白河や門前仲町には大きなショッピングモールがないから、たまに買い物があると、錦糸町に行く。
今日もその帰りで、お気に入りのマグカップを手に入れたあたしは上機嫌で清澄白河に向かう電車を待っていた。
電車が来ると言うアナウンスが流れて数十秒後、ホームに電車が入ってくる。
イスに座っていた人たちが立ち上がり、壁に寄りかかっていた人たちもそこから離れる。
そんな時、そのおばあさんはバッタリと地面に倒れ込んだ。
びっくりしたあたしは数秒、何が起こったのかもわからずにその場に立ち尽くしていた。
けれど、すぐに大変なことが起きていると理解して、おばあさんに駆け寄った。
「大丈夫ですか!?大丈夫ですか!?」
何度もそう声をかけたけれど、おばあさんはぴくりとも動かない。
すぐに救急車を呼ぶべきだと判断して、カバンの中を漁った。
けれど、ケータイはどこを探しても出て来ない。
すぐに周りの人に頼むべきだと判断できたあたしは、大声で叫んだ。
「誰か救急車呼んでください!お願いします!誰か救急車呼んでください!」