小さい頃に習うこと、大きくなってわかること
「おー、おー、うまそうなカレーだなぁ。ちょっと味見させてよ」
聞き覚えのある声に、顔を上げなくても誰だかわかる。
「おれ、野菜いっぱい入ったカレーって好きなのよ」
聞いてもいないのに、自分の好みを勝手に話し始めたこの人は、勝ちゃんのパパ。
多分、みんなの親の中で1番ガキだ。
「何か味見用の小さい皿ある?」
「オラ、邪魔すんじゃないよ!」
鬼、登場。
チェリーママはシッシッと手で勝ちゃんパパを追い払う。
「何だよ。1口ぐらいいいじゃんなぁ?」
勝ちゃんパパはあたしたちに同意を求めたけれど、この状況では何も言えない。
「いいや、食っちゃえ」
え?
と、思った瞬間には、もう勝ちゃんパパの指がカレーの鍋に入っていた。
「コラァ!てめぇ、何やってんだよ!」
チェリーママは勝ちゃんパパを捕まえようとしたけれど、屋台が邪魔したおかげで勝ちゃんパパは見事に逃げ切った。
これぞガキ。
ついこの前、大人になるのを不安に思った自分がバカらしくなった。