小さい頃に習うこと、大きくなってわかること


午後4時を回る頃、小さな夏祭りはすでにたくさんの人で賑わっていた。


子どもたちはゲームに夢中になり、大人たちは買った食べ物を片手に世間話に花を咲かす。


あたしたちのパンケーキも思った以上の売れ行きだった。


「ねぇねぇ、このパンケーキ、真海子ちゃんがやろうって言ったの?」


つい5分ほど前から屋台のヘルプに入ってくれた風由ちゃんは、あたしを見上げてそう聞いた。


「みんなで決めたんだよ」


あたしがそう答えると、「へぇー、愛生ちゃんも?」と言って、今度はアイチを見上げる。


「そうだよー」


アイチがそう答えると、次はシーやん、次はチェリーと、順番に同じことを聞いていく。


きっと風由ちゃんは今、ものすごく緊張していて、それを少しでも紛らわせたいんだと思う。


だからこうやって、どうでもいいようなことをあたしたちに聞いて回っているんだ。



今日の夏祭りには、彼女の片思いの相手が来るらしい。


他の男の子たちとただ遊びに来るだけで、特別、何か約束をしたわけではないと言うけれど、学校の外で好きな子に会うと言うのは、きっとものすごく緊張することなんだと思う。



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