小さい頃に習うこと、大きくなってわかること
「来たらすぐ教えろよ?」
シーやんが風由ちゃんの肩に手を回す。
彼女は真剣な表情で1度こくんと頷いた。
「そんな緊張してると、いつものかわいい風由を見てもらえないよ?」
アイチが優しく笑って肩を叩くと、風由ちゃんの顔から少し緊張が消えた。
「そうだよね。いつも通りで…」
そう言って顔を上げた風由ちゃんの動きが止まった。
彼女の視線の先を追うと、そこにはサラサラした黒髪のかわいらしい男の子がいた。
風由ちゃんの態度から、すぐにそれが片思いの相手であることには予想がついた。
思わず近くに駆がいないか確認してしまう。
みんなもあたしと全く同じことをしていた。
幸い、駆はゲームコーナーで小さい子どもの相手をしていて、こっちに気付く様子はない。
風由ちゃんの王子様はこっちに気付くと、友達の輪から抜けてやってきた。
「よう!」
元気な挨拶をした彼に、風由ちゃんはにっこりと笑った。
「いらっしゃい」
「お前、パンケーキ売ってんの?」
「うん。ちょっとだけお手伝い」