小さい頃に習うこと、大きくなってわかること
夜のたまり場
小さな十字路の角、電気の消えた美容室の隣にオムライス専門店「清澄エッグ」の看板はあった。
ネオンサイン付きの木製看板が店内同様、アメリカンな雰囲気を漂わせている。
3人乗りの自転車は、牛乳配達で鍛えたシーやんの腕のおかげもあってか、危ない目に遭うことなく、清澄エッグの前に到着した。
3人乗りの楽しさを知ったあたしは爽やかな気分で自転車を降りて、その後にすぐチェリーが続く。
彼女はまるで遊園地のアトラクションに乗った後のように目を輝かせていた。
「あー、楽しかった」
「さすがあたしの運転」
シーやんはそう自信満々の笑みを浮かべてから、「またやろうぜ」なんて楽しそうな提案をした。
午後11時過ぎ、営業中は赤く光っているネオンサインは透明なパイプになり、看板にはクローズと書かれた札が掛かる。
それの横に伸びた地下へと続く階段をシーやん、チェリー、あたしの順で降りて行こうとした時だった。
地下の店から30代の男が上がってきた。
がっちりした体型に、爽やかな黒い短髪。
オムライス専門店清澄エッグ店長の修介(しゅうすけ)は、毎日、この時間になると、仕事を切り上げ、他の店に飲みに行く。