小さい頃に習うこと、大きくなってわかること
ここで焦ってはいけない。
絶対に焦ってはいけない。
一度、自分を落ち着かせてから、まっすぐにアイチの目を見つめると、何より聞きたかったことを声にした。
「ねぇ、アイチ。今までどこで何してたの?」
アイチは笑顔を崩さなかった。
それどころか、もっと明るく笑って言う。
「ごめん、ごめん。ちょっといろいろあって」
「ごまかさないで」
必死だった。
もうこれ以上、絶対にごまかさない。
そうすれば、アイチがあたしの前からいなくなることも、もう絶対にないはずだから。
「何、その怖い顔」
アイチはそう笑ってから、続けた。
「約束。もう絶対どこにも行かないよ」
不意打ちだった。
そのたった一言で、一瞬にして涙が溢れてくるのがわかる。
それを必死で堪えながら、もうどうするべきなのかわからなくなって、心の中にまだ残る不安をすべて吐き出すことを優先した。
「もう絶対いなくならない?」
アイチは答えた。
「絶対」
「絶対?」
「絶対」
「じゃあ言うね」