小さい頃に習うこと、大きくなってわかること
「おう。もう、2人下にいるぞ」
アイチがいなくなってから、修介は「揃ってるぞ」と言う言葉を使わなくなった。
昔ならこんな時、「もう揃ってるぞ」なんて言っていたのに。
「あんま飲み過ぎんなよ?」
シーやんがそう釘を刺すと、修介は「うるさい」なんて笑いながら、この商店街でまだ営業している飲み屋の方に歩いて行った。
あたしはチラッとそれを見送ると、もう既に階段を降り始めていたシーやんとチェリーに続く。
階段を降りた突き当たり、右側にある板チョコみたいな木のドアを開けると、上でカランカランと鈴が鳴った。
レンガが埋め込まれた壁に、木製のテーブルやイス。
テーブル席が3つと、カウンター席が6つしかない小さな店内。
シーやんが「おーっす!」と元気な挨拶をして入ると、チェリーもかわいらしく「おっすー!」と真似して続いた。
「おーっす!」
カウンターの中から勝ちゃんが元気に挨拶を返す。
ミルクティー色のツンツンした短髪。
前髪も短いそのサッパリした髪型は、明るさにも品があって、あたしはすごく好きだ。
もちろん、本人も含め、だけれど。