小さい頃に習うこと、大きくなってわかること


勝ちゃんへの告白はうまくいかなかった。


家のソファで泣きじゃくるあたしの横には、アイチがいた。


彼女は何も言わずに、ただずっとあたしの背中をさすってくれていた。


その手が暖かくて、あたしはまた泣く。



泣きながら、ついさっきのことをなるべく詳しく話した。


告白する前に怖くて泣いてしまったこと。


結局、思いは伝えられなかったこと。


勝ちゃんが今まで通りでいようと言ったこと。


全部をなるべく正確に話した。


アイチはまず優しい声で一言、「よく頑張ったね」と言った。


その後でゆっくりと自分の見解を話す。


「ねぇ、真海子?多分、勝ちゃんは真海子が泣いてるのを見て、ずっと苦しませてたって勘違いしちゃったんだと思うよ?だから本当はまだ真海子のこと好きなのに、気を使って今まで通りでいようって言っただけじゃないかな」


アイチはそう言ってくれた。


言ってくれたけれど、あたしにはどうしてもそう思うことができなかった。


勝ちゃんはもうあたしのことなんて忘れて、前を向こうとしている。


そもそも3ヵ月も待たせておいて、今更、好きだなんて都合が良すぎるんだ。



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