小さい頃に習うこと、大きくなってわかること
もう無理だ。
あたしには伝えることなんてきっとずっとできない。
何より、今回のことで、いざとなると恐怖が出て来て、何も言えなくなることがわかってしまった。
「ねぇ、真海子。ちゃんともう1回、話しな?」
アイチはあたしをまっすぐ見つめて続けた。
「怖いのはよくわかる。でも、このままじゃダメだよ」
その言葉にはアイチが言うからこその重みがあった。
あたしと似たような境遇のアイチはこんなにも頑張れているのに、あたしは情けない、最低だ。
「あたしは最低だっ…最低なのっ…。自分の気持ちもちゃんと伝えられない。お母さんが出てくるのっ、気持ちを伝えたらまた捨てられるって思っちゃうのっ…」
そんなあたしを、アイチはぎゅっと抱きしめてくれた。
「真海子は何も悪くない。最低なんかじゃないよ?最低なんかじゃない」
この涙と一緒に、勝ちゃんを思う気持ちも流れ出て、涙が止まったら勝ちゃんのことを忘れてしまっていればいい。
アイチの腕の中であたしはそう思った。