小さい頃に習うこと、大きくなってわかること


100秒が過ぎた後のスポーツセンターは、完全に警察のものだった。


泥棒のあたしにとっては、今、こうして廊下を歩くことすら危険な行為だ。


いつどこで警察に見られているかわからない。


もしかしたら知らず知らずのうちに、はさみうちの計画を立てられているかもしれない。


早く捕まった方が楽になるかも。


なんて、一瞬だけ考えたけれど、勝ちゃんに助け出されたりなんかしたら、その後、どうすればいいのかわからない。


それを考えると、こうして逃げている方が何倍も楽だ。



とくに作戦は立てていなかった。


相手の動きも読んでいない。


ただ何となく思うままに歩いていたら、4階にあるオーディエンス席に着いていた。


青いイスがいくつも並んだ席からは、3階の体育館の様子がよく見える。


休日の今日は小学生ぐらいの子どもたちがコーチらしき大人とバトミントンをやっている。


子どもを対象にしたスクールらしい。


それを見ながら、入口から1番遠いところまで歩く。


思えばここではさみうちをされたらもう捕まるしかない。



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