小さい頃に習うこと、大きくなってわかること
相当な量のお酒を飲んだらしい。
彼女はずっと笑いっ放しで、ちゃんとした会話すら成り立たなかった。
「また何でそんなに飲んじゃったの?」
「ひゃはは、飲んじゃった」
「だからまた何で…」
「ひゃははははは」
「…」
まるで幼児を相手にしているようだ。
いや、幼児ですら、もうちょっとちゃんとした会話が成り立つ。
元々、お酒が弱い彼女だけれど、こんな風に酔っ払う姿は初めて見た。
「何で、こんなに、お酒、飲んじゃったんですか?」
今度はお年寄りにするみたいに、言葉を短く区切って話しかけてみる。
「何で?そんなのわかんない。ひゃははははは」
ダメだ、こりゃ…。
けれど、彼女がここまでお酒を飲んだ理由が知りたかった。
何か嫌なことがあったのかもしれないと予想すると、何としてでも聞き出さなきゃと思う。
「ねぇ、アイチ」
何度目かわからない「お酒を飲んだ理由」をまた聞いてみようとした時だった。
「寂しいよ」
アイチは今までのバカみたいに明るい態度を消して、そう一言言った。