小さい頃に習うこと、大きくなってわかること
ドラッグスター250
土曜日の昼。
天気は晴れ。
くるぶしまで隠れる靴下にジーパン、シーやんに借りたヘルメット。
準備万端のあたしは、アパートの下でアイチが降りて来るのを待っていた。
カバーの掛かっていない彼女のバイクを見たのは、きっと数ヶ月ぶりだと思う。
自転車置き場の奥にあるバイクの駐車スペースには、黒光りするドラッグスター。
やっぱりいつ見てもカッコいい。
「明日、バイク乗る?」
アイチが突然そう言ったのは、つい昨日のことだった。
元々、お台場に遊びに行く約束をしていたけれど、どうせなら出すから乗れば、と誘ってもらった。
どういう心境の変化なのかはわからない。
けれど、とりあえず乗せてもらえると言うことに、あたしはものすごく舞い上がっていた。
すでにカバーの外されているドラッグスターに近づいてみる。
簡単には触れられない雰囲気を出しているそれを、手を後ろに組んで詳しく見てみた。
大きく曲がっているハンドルには、何のスイッチだかよくわからないボタンがたくさん付いている。
ただ押すだけのボタンやスライド式のもの、矢印やら三角やらマークこそ付いているものの、それが何を意味するのかはわからない。
あたしにはさっぱりだ。