小さい頃に習うこと、大きくなってわかること
バイクにまたがったアイチは、いつもと雰囲気が違って見えた。
オレンジ色のヘルメットに、茶色いサングラス。
何だか彼女までイカツく 見える。
ドラッグスターは、車体を起こすのも、ハンドルを動かすのも、何だかすごく重々しかった。
アイチが先にまたがって、あたしが後に乗る。
このパターンと言えば、いつも移動手段に使う自転車も同じだけれど、それとは迫力も緊張感も全然違う。
ドッドッドッドッと規則正しい重い音が響く中、前に座るアイチは、こっちに振り返った。
「何かあったらすぐ言ってね」
そんな彼女にあたしは「はい!」なんて小学生並みに元気な返事をする。
「じゃあ行くよ?」
「うん」
あたしが頷くと、ドラッグスターはうるさいくらいの音を響かせて、走り始めた。
生まれて初めて乗るそれは、まるで遊園地のアトラクションのようだった。
自転車とも車とも違うその感覚は、あえて言うなら動き出したばかりのジェットコースターに似ている。
「楽しいっ!」
前に座る彼女にそう言ってみたけれど、運転に集中しているらしく返事はない。