小さい頃に習うこと、大きくなってわかること


信号が青になると、何だかわからないガチャンと言う音がして、ドラッグスターは動き出す。


アイチは手元のスイッチなんかを動かしつつ、今、走っていた車線のすぐ隣、1番左の車線に入った。


今度はさっきと違って、どんどんスピードが上がっていく。


もう遊園地のアトラクションのようだなんて感じていられない。


もちろん、きゃあきゃあ騒ぐ余裕なんてもっとない。


後ろに落ちてしまいそうな恐怖を感じていた。


もちろん、背もたれがちゃんと付いているから、そんなことはないんだけれど。


不覚にも怖いと思ってしまう自分がいた。


自分から乗せてと言い出しておいたくせに、今は止めてもらいたいなんて思うくらいの怖さを感じる。


笑われるかもしれないけれど、きっとこれを命の危機に対する恐怖なんて言うのかもしれない。


今まで1度も命の危機を感じる場面に遭遇したことはないから、その表現が正しいのかどうかはわからないけれど。


きっとアイチはそれを感じ取ったんだと思う。


ドラッグスターは、1番左の車線から真ん中に戻って、スピードも遊園地のアトラクションレベルに戻っていた。



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