小さい頃に習うこと、大きくなってわかること
お台場に着いたあたしたちは近くにあったカフェに入って、長旅の疲れを癒やした。
いや、本当は30分くらいしか走っていないと思うけれど、あたしにとっては長旅だ。
クーラーの効いた涼しい店内で、あたしはアイスティーを、アイチはジンジャーエールを飲んでいた。
「あれで80キロぐらい出てた?」
アイスティーにシロップを入れながら聞いてみると、アイチは笑った。
「今日は最高で40しか出してないよ」
「あれで40!?」
あたしの中の時速と半分も違う。
確かに昔、自転車でも頑張れば20キロは出せると聞いたことがあった。
それとたった20キロしか違わないのに、あの怖さだ。
「アイチはいつもどれくらいで走ってるの?」
「場所にも寄るけど…だいたい60かな」
20キロしか変わらないけれど、それがすごい違いであることは簡単に想像できた。
「何か尊敬する」
あたしが真面目にそう言うと、彼女はまだ火のついていないタバコをくわえたまま、声を上げて笑った。
けれど、あたしにとっては笑い事じゃない。