小さい頃に習うこと、大きくなってわかること
今まではとくに何とも思わなかったけれど、実際に乗って体感してみると、バイクを運転できる彼女のことを心からすごいと思った。
あたしにはさっぱりわからないスイッチをいじりながら、足でも何かを操作している。
何より、あのスピードに耐えられることが本当にすごいと思った。
アイチは探していたライターを見つけると、タバコに火をつける。
それを1度吸ってから笑って言った。
「あたしも最初は40でかなり怖かったなぁ」
「アイチも?」
「でも慣れるんだよね」
やっぱり怖さも体験しているうちに慣れるものなんだろうか。
煙を吐き出した彼女に聞いてみる。
「今はもう全然怖くないの?」
この問いを、アイチは絶対バカにすると思っていた。
からかうような顔をして笑いながら、「あたしが怖がるわけないじゃん」なんて。
けれど、その想像とは違って、彼女は真面目な顔で答えた。
「怖いよ」
「怖いの!?」
予想外の答えに思わず聞き返してしまう。
「怖いに決まってんじゃん。事故って死ぬかもしれないって思うとホント怖い」