小さい頃に習うこと、大きくなってわかること
みんなが一斉に立ち上がって拍手をする。
「お誕生日、おめでとう!」
「19歳だな」
「10代最後だよ!」
「19歳も楽しく行こうぜ!」
みんなが口々に祝福する中、あたしは「絶対に最高で幸せな1年にしようね」と彼女の目を見て言った。
彼女はあたしの目を見て「ありがとう」と微笑む。
それは心からの願いだった。
アイチは絶対に幸せにならなきゃいけない人間だ。
19歳こそは、あの男ももう来ないと約束したし、本当に幸せで最高な1年を送ってほしい。
アイチはみんなの言葉を1つ1つ大切に受け取ってから、後ろを向いてカウンターのジンジャーエールを1口飲んだ。
けれど、なかなかこっちを向かない。
「みんな、本当にありがとう」
そう言ったアイチの声が涙声だった。
それには多分、この場にいる全員が気付いたと思う。
もちろん一瞬、聞き間違いかとも思ったけれど、やっとこっちに振り返った彼女の目から涙が2滴続けて零れた。
彼女は目の周りを手で何度も拭う。
「あー、もう!」
目が赤く腫れていた。
涙で頬が濡れていた。
それは隠しようもない完全な泣き顔だった。