小さい頃に習うこと、大きくなってわかること
それからどれくらいの時間が経ったのかはわからない。
聞き慣れたケータイのメロディーで目が覚めた。
アラームをかけて寝たから、もう朝か、とも思ったけれど、よく聞くと、それは着信音に設定している曲だった。
電話だ。
こんな時間に一体誰だろう。
まだ寝足りなく感じていたあたしは、このまま寝てしまうことも考えたけれど、相手くらいは確認してからにしようと思い直し、サイドテーブルに手を伸ばした。
手だけでその上を探して、ケータイを見つけると、まだちゃんと開かない目で画面を見る。
そこに表示されていたのは珍しい相手、「千津ちゃん」の文字だった。
時間はまだ4時36分。
一体、こんな時間にどうしたんだろう。
「はいはい?」
返事をした声が、自分でもわかるくらい寝起きの声だった。
「真海子!?今、お家!?」
聞こえてきた千津ちゃんの声がびっくりするほど焦っていた。
一瞬にして、何か大変なことがあったんだと予想できる。
「どうしたの!?」
慌てて体を起こすと、千津ちゃんの次の声に神経を集中させる。
千津ちゃんは小さい子どもに言い聞かせるような口調で言った。