小さい頃に習うこと、大きくなってわかること
「ねぇ、真海子。落ち着いて聞くのよ?聞けるわよね?」
あたしはとりあえず「うん」とだけ短く返事をしたけれど、胸騒ぎはどんどん激しくなっていく。
千津ちゃんは焦りこそ見えるものの、しっかりとした声で告げた。
「今、愛生がバイクで事故を起こしたらしいのよ。すぐに来てくれって言われたから、今すぐ病院に向かいましょう」
それは今までに経験したことのない衝撃だった。
心臓がドッドッドッと音を立てて動いている。
「事故!?無事なの!?」
その質問への答えはなかった。
「とにかく急いで。みんなにも至急、連絡取れるかしら」
「わかった!」
そう言ってみたものの、本当はもう何が何だかわからなかった。
頭が全然、状況を飲み込んでいかない。
けれど、今は取り乱している場合じゃないと言うことだけは、やたらと冷静に頭の中に入ってきた。
千津ちゃんとの電話を切ると、すぐに駆の番号を呼び出した。
きっと彼なら冷静に行動してくれる。
ケータイを持つ手が震えていた。
自分にしっかりするよう、言い聞かせて、ケータイを耳にあてる。
コール音がいつもより長く響いた後、駆もやっぱり寝起きの声で返事をした。