小さい頃に習うこと、大きくなってわかること


「ねぇ、真海子。落ち着いて聞くのよ?聞けるわよね?」


あたしはとりあえず「うん」とだけ短く返事をしたけれど、胸騒ぎはどんどん激しくなっていく。


千津ちゃんは焦りこそ見えるものの、しっかりとした声で告げた。


「今、愛生がバイクで事故を起こしたらしいのよ。すぐに来てくれって言われたから、今すぐ病院に向かいましょう」


それは今までに経験したことのない衝撃だった。


心臓がドッドッドッと音を立てて動いている。


「事故!?無事なの!?」


その質問への答えはなかった。


「とにかく急いで。みんなにも至急、連絡取れるかしら」


「わかった!」


そう言ってみたものの、本当はもう何が何だかわからなかった。


頭が全然、状況を飲み込んでいかない。


けれど、今は取り乱している場合じゃないと言うことだけは、やたらと冷静に頭の中に入ってきた。



千津ちゃんとの電話を切ると、すぐに駆の番号を呼び出した。


きっと彼なら冷静に行動してくれる。



ケータイを持つ手が震えていた。


自分にしっかりするよう、言い聞かせて、ケータイを耳にあてる。


コール音がいつもより長く響いた後、駆もやっぱり寝起きの声で返事をした。



< 235 / 312 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop