小さい頃に習うこと、大きくなってわかること
セミの声がうるさい道を、ただひたすらエッグに向かって歩いていた。
手にはアイチのバースデーケーキ。
結局、あのままアイチに会うことができなかったあたしは、病院から帰るなり、すぐケーキの準備に取りかかった。
オレンジ色の生クリームを塗ったヘルメット型のケーキ。
それを予定より2時間遅れた午後4時に作り終えたあたしは、みんなと合流するため、エッグを目指して歩いていた。
8時から約束の誕生日パーティーが始まる。
たとえアイチが来られなくなったとしたって、パーティーは決行する。
だって今日はアイチの19歳の大事な誕生日なんだ。
いつもだったら自転車ですぐの距離も、今日は歩くしか手段がない。
この暑さの中で10分以上もウォーキングをする気はなかったけれど、自転車の運転手であるアイチを呼ぶわけにはいかないんだから、仕方ない。
だって、呼んだら、誕生日パーティーのことがバレてしまう。
あまりの暑さで見える景色が揺れていた。
フッと見上げた空が、眩しくて目を開けていられないほど青い。
7月17日。
19歳のアイチの誕生日は快晴だ。