小さい頃に習うこと、大きくなってわかること


そんな声を聞きながら、ケーキにロウソクを立てていく。


駆がそれに火をつけていくと、1本の長いロウソクと9本の短いロウソク、すべてに火が灯った。


店内は異様なくらい静まり返っていた。


あたしは何とかみんなの顔を視界に入れないようにしていた。


入れればきっと泣いてしまうから。


「ハッピーバースデー、トゥーユー」


突然、店内に駆の歌声が響き渡った。


誰からともなく、みんなもそれにメロディーを乗せる。


「ハッピーバースデー、ディア愛生ー、ハッピーバースデー、トゥーユー」


その歌は終わらなかった。


またもう1度、最初から歌い直される。


「ハッピーバースデー、トゥーユー」


今日はアイチの19歳の誕生日なのに。


幸せな誕生日になるはずだったのに。


歌いながらその場にいる全員が泣いていた。



神様は意地悪だ。


意地悪どころじゃない。


最低で最悪で非道なことをする奴だ。


涙が止まらなかった。



ねぇ、神様?


アイチを返してください。


代わりが必要ならあたしが行くから。



歌いながら、チェリーがプレゼントの入った箱を持ってきた。


それを今日の主役の席の前に置く。



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