小さい頃に習うこと、大きくなってわかること


「ねぇ、シーやん!アイチが事故った道ってディンゴのお墓に行く道!?」


自分を抑えられずに思わず起き上がった。


もしそうなら、またあの男に何かされたのかもしれない。



シーやんは小さく首を横に振ってから、落ち着いた声で言った。


「あたしもディンゴの墓に行ったんじゃないかって思ったよ。でも、反対方向だから違うな」


それじゃあアイチは一体、どこに…。


シーやんは落ち着いた口調で続けた。


「多分、あいつ、目的地なんて考えてなかったんだと思う。ただ単に走りたかっただけなんじゃねぇかな。ちょっと走ってすぐ帰ろうと思ってたんだよ」


確かにアイチはよく、目的地も決めずに走りに行っていた。



落ち着いて考えてみれば、ディンゴのお墓に行ったなんて違うに決まっている。


だってアイチは嫌がらせを止めることと引き換えに、もう2度とあの男の住む街に近寄らないと約束させられているんだ。


それを破ると言うことは、また嫌がらせが始まると言うこと。


周りを巻き込むのが大嫌いなアイチが、約束を破るとは思えない。


あの男は関係ない。


いくら何でもアイチに事故を起こさせるなんてできないに決まっている。



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