小さい頃に習うこと、大きくなってわかること
その日の家はコールセンターと化していた。
幼なじみ5人で、手分けしてアイチの関係者に電話をかける。
「あっ、もしもし、小学校の時、6年2組だった上倉(うえくら)駆と言う者ですが…」
駆の声が聞こえる。
「あ、あの、そちらで働いている福中(ふくなか)愛生の友人の高城(たかしろ)千絵里と言います」
チェリーの声が聞こえる。
「そう!あたし!中学の時、一緒だった古橋(ふるはし)静音!」
シーやんの声が聞こえる。
「そちらの学校に通っていた福中愛生の友人の北山(きたやま)勝と言う者なんですけど」
勝ちゃんの声が聞こえる。
あたしはまだ、誰にも電話をかけることができないでいた。
ケータイを開いたまま、ボタンを押す手が止まっている。
こんな残酷な電話をかける気にはなれなかった。
相手の反応を考えると、益々、ボタンを押すことができない。
自分の前にある連絡しなきゃいけない人のリストを見る。
高校関係、保育園関係、転校した小学校関係、最後にあたしのお母さん。
これでも5分の1だ。
アイチの顔の広さを実感する。