小さい頃に習うこと、大きくなってわかること


そうだ。


アイチはこんなにもたくさんの人に愛されていたのに。


愛されていたのに…


「どうした?」


隣を見ると、心配そうなシーやんの顔。


彼女はあたしの前にある1つも名前の消えていないリストを見てから、視線をあたしに戻した。


「無理するな。あたしが連絡しとくから、リスト貸せ」


その優しさをあたしは断った。


あたしだけ甘えているわけにはいかない。


「ありがとう。大丈夫だよ」


辛いのはみんな一緒だ。


みんな、痛む心を抱えて、電話をしているんだ。



あたしは手始めに、高校の大岩先生に電話をかけた。


コール音が少し続いた後、すぐにハキハキした口調の先生が学校名を告げた。


それを聞き終わってから、しゃべり出す。


「今年、卒業した奥戸真海子と言います。大岩先生はいらっしゃいますか?」


ハキハキした口調で少し待つように言われると、それと入れ代わりに音楽が流れ始めた。


それを聞きながら、大岩先生を待つ。


音楽が終わっては、またリピートされ、と言うのを何回か繰り返すと、懐かしい声が聞こえた。


「もしもし、お電話代わりました、大岩です」



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