小さい頃に習うこと、大きくなってわかること

さよなら、みんな



アイチの祭壇の前に、喪服を着た自分が立っている。


そのことにあたしは全然現実味を感じることができなかった。



たくさんの白い花で囲まれた祭壇の中央、アイチは写真の中でいつものように笑っていた。


あの楽しそうな笑顔。


アイチの遺影は、商店街の夏祭りの時のものを使った。


勝ちゃんパパがジャックスパロウのモノマネをして、あたしたちがまだピースをしていないうちに撮られたあの1枚だ。


それが1番、アイチらしい笑顔だった。


まさかその数週間後にその笑顔が遺影になるなんて、夢にも思わなかった。


「立派な祭壇ね」


喪服を着た千津ちゃんが微笑んでそう言った。


「写真もすごい愛生らしいよな」


駆が明るくそう言う。


「背景が水色だと何か映画のポスターみたいだな。カッコよくなりすぎじゃねぇ?」


勝ちゃんがそう言うと、みんなが笑う。


明るく話をしているのに、その場には常にしんみりした空気がつきまとっていた。



「こんにちは」


後ろから聞こえた声に振り返ると、そこにはアイチのお母さんが立っていた。


ロングの黒髪を後ろでまとめて、喪服に身を包んでいる。



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