小さい頃に習うこと、大きくなってわかること
「おれは本当に『死ね』と言ったまでだ。あいつの部屋をめちゃめちゃにしてやった後、『今すぐここで死ね』と。でもあいつは『誕生日までは待ってくれ』と言った。だからおれは待ってやった。そして今日、その結果を見届けに来たまでだ」
頭がおかしくなりそうだった。
アイチはこの男に「死ね」と言われたぐらいで、本当に死を選んだの?
ただその言葉だけで?
ねぇ、冗談でしょ、アイチ。
何で…
そこまで考えてハッとした。
アイチはこの男に「死ね」と言われたぐらいじゃ、絶対に死んだりしない。
しないけれど、ただ1つ。
アイチを言葉だけでも死に向かわせる方法。
いや、いくらアイチでも、その言葉だけで死には向かわないと信じたかった。
「もし死ななかったら、お母さんに何かするって言ったの?」
「鋭いな」
男は気持ち悪い笑みを浮かべながらそう言った。
そして続ける。
「でもまさか本当に死んじまうとはな。普通はそんなの冗談だとわかるだろう?」
冗談…?
まだ12歳だったアイチの前でディンゴの命を奪っておいて、それでお母さんに何かすると言う冗談…?
「ふざけんな!やり方が卑怯すぎる!」