小さい頃に習うこと、大きくなってわかること
みんなを守るための嘘
ニュースや新聞に報道されることもなく、死ぬこともなかったあたしは、その日の夜には何事もなかったかのように家にいた。
周りには深刻そうな顔をした幼なじみ4人みんなが座っている。
あたしの左手首には包帯が巻かれていた。
救急車で病院に運ばれた割には軽傷だった。
死ぬと言うことはそんなに簡単なことじゃないらしい。
手首を切った時、あたしは本当に死ぬ気でいた。
激しい痛みを感じたし、意識は薄れるし、自分の最期を悟っていた。
それでも軽傷だ。
あれで軽傷だ。
アイチは一体、どれだけの痛みと恐怖を味わったんだろう。
半袖を着ているせいで、その包帯はよく目立った。
みんなは病院からずっと、何を聞くでもなく、ただあたしの側にいてくれた。
自分の手を見つめていたら、横にいたシーやんがあたしを真剣な目で覗き込んだ。
「なぁ、真海子。1つだけ教えてくれ」
何を聞かれるのかはもう何となくわかっていた。
「愛生の後を追うつもりだったのか?」
その問いに、みんなの視線が自然とあたしに集まる。