小さい頃に習うこと、大きくなってわかること


「お通夜の連絡をみんなに回した夜、そのボランティアのこと思い出して、もし申し込みとかしてたら断らなきゃいけないなって思ったんだ。それで調べてみたんだけど、そんな募集、どこにもなかったんだよね」


駆は英語をしゃべることのできる友達にも協力してもらって、直接、施設に問い合わせたと言う。


けれど、そんな募集は一切されていなかった。


「ただ単に愛生が別れたいだけで、それを口実に使ったのかもしれない。でも何かおれにはそう思えないんだ。愛生はおれと友達に戻りたいなら、はっきりそう言うはずで、夢を口実になんか絶対しないはずだから」


そこまで言うと、駆はあたしを見た。


「おれは絶対に愛生は事故ったんだって思ってる。でもこれだけは聞かせて?真海子、何か知らない?」


あたしは駆から目を逸らさずに一言だけ言った。


「何も」


そう答えるのが精一杯だった。


アイチや駆のことを考えたら、やっぱり真実を言うことはできない。


「そっか。ならいいんだ」


駆は優しい笑顔を浮かべて、それ以上はもう何も聞いてこなかった。



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