小さい頃に習うこと、大きくなってわかること
最期の別れ
午前7時半にアイチの祭壇がある斎場の扉は開いた。
昔は一晩中付きっきりで棺を守るのが主流だったらしいけれど、今はほとんどの人がそれをやらずに帰るらしい。
葬儀屋の人に体を休めるよう勧められたあたしたちも一旦、夜は家に帰って、斎場が開く時間の少し前には入口に集まっていた。
おじさんに斎場の扉を開けてもらうと、まだ葬儀屋の人も出勤する前だった。
あたしたちは5人揃って、まっすぐにアイチの祭壇がある部屋に向かう。
部屋に入るとすぐ、止まったままのアイチの笑顔に迎えられた。
「おはよう」
誰からともなく、みんなが自然とそう口にしていた。
あたしたちはまっすぐにアイチの棺の前に行くと、迷わずフタに付いた小さな窓を開けた。
そこから見えるアイチはやっぱり寝ているみたいだ。
枕元にはあたしたち6人でお神輿を担いだ時の写真。
本当はタバコも入れてあげたかったけれど、彼女は吸っていることを大人たちに隠しているからやめておいた。
あたしたちはただ黙ってアイチの顔を見つめていた。
また涙が溢れてくる。