小さい頃に習うこと、大きくなってわかること


「なぁ、愛生。早く起きろよ。冗談ならやりすぎだぜ?」


シーやんはそう言って笑顔を浮かべていたけれど、すでに消えそうだったそれは次の瞬間にはもう悲しみに飲み込まれていた。


それでも彼女は続ける。


「なぁ、早く起きろよ。もうお前の体、燃やされちまうんだぞ?早く起きろよ。もう時間がねぇんだよ」


そして彼女は最後に震える声で言った。


「なぁ、愛生。お前、このままでいいのかよ」


棺の中のアイチからの返事はない。


目を閉じた寝顔のまま。


シーやんの頬を涙が伝う。



感情が込み上げてくるのを感じなかった。


感じなかったのに、頬に暖かい1筋が流れるのを感じた。


何であたしの体は暖かいんだ。



アイチの棺から離れて、背を向ける。


もうそれ以上、アイチやみんなを見ていられなかった。



背中に暖かい手の感触を感じて横を見ると、チェリーが優しく微笑んでいた。


けれど、彼女の目からも涙が次々にこぼれ落ちている。


チェリーはあたしの横に立ったまま、背中を優しく撫でていてくれた。



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