小さい頃に習うこと、大きくなってわかること

天国…?



ネックレスはちゃんとあたしの手の中にあった。


傷付くこともなく、粉々になることもなく。


トラックは!?


と、思って、顔を上げると、そこは真っ白な世界だった。


左右、上下、前後、どこを見てもただただ真っ白な世界。


普通に考えたら、絶対にありえない光景だ。


けれど、その嘘みたいな光景は今、確かにあたしの目の前に広がっている。


夢かもしれない。


そう思ったけれど、目は覚めなかった。


いくら思っても、今日は覚めることがない。


そこで初めて自分は死んだんだと思った。


確かにあんな大きなトラックに、あんなスピードでぶつかられたら命なんて助からない。



ゆっくりと周りを見回してみた。


真っ白で静かな世界。


ここが天国なんだろうか。


だとしたら、ものすごく殺風景だ。


あたしのイメージしていた天国は花畑があって、空が青くて、小鳥のさえずりが聞こえて、もっとキレイな…


「何やってんの?」


後ろから聞こえた声に心が震えた。


それはもう随分聞いていなかった声だけれど、確かに聞き覚えのある声。


ゆっくりと振り返ってみる。



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