小さい頃に習うこと、大きくなってわかること
そこにいたのはやっぱりあたしの想像した通りの人物、アイチだった。
そしてその隣には大きなシェパード犬、ディンゴも一緒だ。
「アイチ…?ディンゴ…?」
アイチは笑っていた。
昔と変わらないあの楽しそうな笑顔。
堪えきれず、涙が両頬を伝う。
あたしは彼女に駆け寄ると、その体を強く強く抱きしめた。
「大袈裟だな。ほんの1年くらいしか離れてなかったのに」
アイチはそう言うと、あたしをぎゅっと抱きしめ返してくれた。
「もう絶対離さないから」
あたしが本気でそう言うと、アイチの声から笑いが消えた。
「怖いんですけど」
「ちょっと、何、怖いって!」
「同性にそんなこと言われたら、誰だって怖いわ!」
「あー、駆じゃなくてすいませんねー」
「別に駆がいいとは言ってませんけどねー」
天国に来てまでやりとりは昔と変わらない。
何だかものすごく幸せだった。
「ディンゴー」
アイチから離れたあたしは、隣に座るディンゴを抱きしめる。
あたしが大きくなったせいか、ディンゴは少し小さくなったような気がした。
けれど、彼は昔と変わらず、あたしの頬を優しく舐めてくれる。
「ディンゴー。ヨシヨシ」