小さい頃に習うこと、大きくなってわかること
アイチはその言葉に何も言わなかった。
ただ、優しい笑顔を浮かべて言う。
「みんなにもありがとうって、事故なんか起こしてごめんって伝えといて。でも精一杯生きて。また絶対会えるから」
「待って、アイチ、ねぇ!」
彼女の笑顔が少しずつ薄れていく。
あたしが何を言ってももう答えてくれない。
代わりにみんなの声が鮮明に聞こえてきた。
座っていたはずの自分が寝ていたことに気付く。
ゆっくりと目を開けた。
そこは見たこともない部屋で、けれど、保健室みたいなカーテンがあったから、病院だと言うことはすぐにわかった。
あたしのベッドの周りにはみんながいた。
シーやん、チェリー、勝ちゃん、駆、千津ちゃん。
「真海子!わかるか!?」
「大丈夫か!?」
その問いにゆっくりと頷く。
「目を覚ましました!」
ナースコールを押したシーやんが大きな声でそう伝える。
看護士さんが「すぐ行きます」と答えた声が聞こえた。
涙が耳の方に伝っていくのを感じた。
反対側の耳ももうすでに濡れた感覚があるから、どうやらずっと泣いていたみたいだ。