小さい頃に習うこと、大きくなってわかること
第五章
成人式
成人式の晴れやかな着物に身を包んで、あたしたちはアイチのお墓の前にいた。
「よし。じゃあこれから愛生のために黙祷を…」
線香を立て終わった駆がそう言うと、勝ちゃんが不満そうな声を出す。
「えー?そう言うのいらないだろー」
とは言え、駆だってここで譲るわけにはいかない。
「大事だよ、大事。はい、今から1分。よーいスタート!」
その声と一緒にあたしたちは目を閉じたけれど、1分間はそれぞれが心の中で計ればいいものなんだろうか。
誰もそこには触れないから、あたしも真面目に1から数を数えていた。
1、2、3、アイチ、5、6、7、元気にやってる?今のは2秒くらいとして、10、11、あたしは元気にやってるよ。えーと10…あれ?今、いくつまで数えたっけ?
これじゃあ、ちっとも黙祷の意味がない。
あたしは数えるのをやめて、時々、顔を上げてはみんなの様子を盗み見ていた。
1番に顔を上げたのは駆だった。
それに3秒ほど遅れて勝ちゃんが、さらに5秒ほど遅れてチェリーが顔を上げる。
こんなにバラバラでいいんだろうか。
シーやんはまだ顔を上げないし。