小さい頃に習うこと、大きくなってわかること


みんな、黙ったままだった。


明るく送り出せたのかと聞かれたら、多分、答えはみんな一緒なんだと思う。


「おれはもう一度、愛生に会って、おれたちなりに愛生のためになる送り出し方をしたい」


あたしたちなりにアイチのためになる送り出し方。


今、この場で考えてみようとしたけれど、すぐに難しいことだと気付いて、答えを出すのをやめた。


やっぱり1年経った今もわからないことだらけだ。


自分があの時、どうするべきだったのか、そして今、どうするべきなのか。


考えれば考えるほどわからない。


「愛生さぁ、今頃何やってんだろうな」


そう言ったのはカウンターでグラスを拭く勝ちゃんだった。


その声がいつもよりずっと優しい。


「幸せにやってんだろ」


シーやんは天井を仰いで、タバコの煙を吐き出した。


「絶対幸せにやってるよ。友達もいっぱい作ってるだろうし」


チェリーがそう言うと、駆が続いた。


「向こうでも楽しいことばっか見つけてあいつらしくやってるよ」


それを聞いた瞬間、懐かしい笑顔が頭の中に浮かんだ。


本当に楽しそうで、こっちまで幸せになる笑顔。



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