小さい頃に習うこと、大きくなってわかること

橋の上で



勝ちゃんに告白されたあの橋に、あたしは彼を呼び出していた。


まだ5時過ぎだと言うのに、冬のせいで辺りはもう暗くなっている。


あたしは成人式のこの日、勝ちゃんに気持ちを伝えることを決意していた。


アイチが亡くなるちょっと前に、あたしの背中を押してくれたから。


ドロケーを企画して、大事なことに気付かせてくれたから。


もう逃げるのはやめたんだ。



勝ちゃんは少し緊張した様子でやって来た。


彼も少しはこれから何を言われるのかわかっているんだと思う。


「改まって何だよ」


彼はあたしの隣に立つと、同じように川の流れに目をやった。


あたしは握っていた欄干から手を離して、勝ちゃんの方に向き直る。


それを見た彼も同じようにこっちに向き直った。


あたしは勝ちゃんをまっすぐに見つめた。


「あたし、勝ちゃんのこと、恋愛的に好き。1年半前もその前も、本当はずっと好きだったの」


勝ちゃんは驚いた表情でこっちを見ていた。


あたしは逃げることなく、さらに続ける。


「勝ちゃん、あたしを彼女にしてくれますか?」



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