小さい頃に習うこと、大きくなってわかること
「その欠けちゃったとこ、自分の不注意でやっちゃったらしいんだ。だから何かそれが自分の弱さみたいな気がして、真海子の前で堂々と付けてること、できなかったらしい」
そう言われて、小6の冬、傷だらけで帰ってきたアイチの姿が思い浮かんだ。
多分、このネックレスの欠けた部分と傷はあの男にやられたものだ。
それを自分の弱さのように思っていたなんて…
そう唇を噛み締めた時、駆はいつもと何1つ変わらない態度で言った。
「だから、いつも服の下に付けてたよ」
服の下に?
何で駆がそんなことを知って…
そこまで考えて、思わず駆を見てしまった。
彼はいつもと変わらない態度で、タバコを吸っている。
「こんな場面で惚気ないでください!」
あたしがそう言うと、駆はきょとんとした顔をした。
「え?おれ、いつ惚気た?」
もう。
駆は鈍くないと思っていたのに。
「何でアイチが服の下にネックレス付けてること知ってるの?」
あたしがそこまで言うと、駆はやっと気付いてくれた。
「あー、わり、今のなかったことね」
「あーあ、アイチ、そう言う類いの話、一切あたしにしなかったのになぁ」