小さい頃に習うこと、大きくなってわかること
「いやぁぁぁっ!」
チェリーはそう叫んだかと思うと、一目散にエッグを飛び出す。
「うわぁぁぁ!」
「やべぇ、怖い!」
「出たー!」
チェリーの叫び声につられたみんなも口々にいろんな叫び声を上げて、よろよろしながらもエッグを出て行く。
あたしは1人、そこに残って、逃げずにゆっくりと部屋の中を見回した。
みんなで飲んでいたテーブル、キッチン、ブラックボード、メニュー表。
そのどこかに探せば必ず異変が見つかるような気がした。
今ならアイチに会える、いや、出そうな気がする。
「みんな、楽しそうで何よりだよ」
ん?
誰の声?
シーやん?
チェリー?
けれど、確かにこの部屋にはあたし1人しかいないはずなんだ。
と、なれば残るはあと1人…
「アイチ…?」
静まり返った部屋にそう問い掛けてみた。
何の異変も起こらない。
ホラー映画のように、何かが勝手に動いたり、大きな音がしたりもしない。
ただ、静まり返ったままの部屋。
「アイチ。あたし、アイチに会いたい。会ってまた話がしたい。でも、ごめん!やっぱり怖い!」
あたしはそう言うと、みんなと同じようにエッグを出た。
自然と笑みがこぼれていた。
天国で待ってて。
そう思えるから、あたしたちは大丈夫。