小さい頃に習うこと、大きくなってわかること
情けないけれど、安心させてあげたい。
その思いはみんなと一緒だ。
アイチが大好きだった明るい雰囲気を作ってあげたい。
アイチがいた時と同じようにみんなで笑っていたい。
でも、もう限界だった。
自分の荷物を掴んで席を立つ。
一瞬、目が合った駆が心配そうな表情を浮かべていた。
けれど、もうあたしにはどうすることもできなかった。
逃げるように早足で店を出る。
誰かがあたしの名前を呼んだけれど、今は返事のできる状態じゃなかった。
自分が情けなくて情けなくて仕方なかった。
アイチの姿を思い出すと、1年前の悪夢も一緒にくっついてきてしまう。
それを思い出したくなくて、頭の中を真っ白にしようとして、けれど、未だにそんなことをしているあたしは本当に情けなくて。
つい昨日会ったようなアイチの姿。
それにしつこくくっついてくる悪夢。
それを振り切るように階段を駆け上がって、自転車に飛び乗った。
涙は次々に頬を流れる。
あたしは情けない。
あの日から何一つとして変わっていない。
悲しいのも、
苦しいのも、
情けないのも、
どうしようもないこの絶望も。