小さい頃に習うこと、大きくなってわかること
正直、どう言えば正解なのか全然わからなかった。
生まれてから今まで、そんな場面に遭遇したことはなかったし、けれど、自分にできる限りの答え方はしたつもりだった。
奈々ちゃんの嫌がらせが始まったのはその翌日からだった。
最初は他の子を味方に付けようとしたり、あたしの焼いたクッキーを砕いたり、まだかわいいものだった。
けれど、それは段々とエスカレートして、ついにはあたしの作ったケーキに針を刺して、客に売った。
もちろん、すぐにクレームが来たけど、食べる前に気付いたことや買って行ったのが常連さんだったこともあって、大きなトラブルにはならなかった。
とは言え、事態は確実に深刻になってきている。
関係ない人まで巻き込むようになっては、さすがに放っておくわけにはいかない。
どうしてこんなことになってしまったんだろうと思ったけれど、そんなことはいくら考えてもわからない。
もしもあの時、あたしが一緒にカバンや服を捨てていれば、こんなことにはならなかったんだろうか。
そんなことを思った時、裏口のドアは開いた。
私服に着替えた奈々ちゃんはあたしと目が合うなり、すぐ視線を逸らす。