小さい頃に習うこと、大きくなってわかること
そのまま歩いて行こうとした奈々ちゃんに言った。
「ちょっといい?」
それだけ言って先に歩き出すと、奈々ちゃんは面倒くさそうな顔をしつつも、その後についてきた。
よかった。
ここで帰られてしまったら、もう何もできない。
とりあえず第一関門は突破だ。
話し合いの場所はとくに決めていなかった。
ただ、駅に向かう道を歩きながら、人があまり通らない場所を探していたら、パティスリーから少し離れたところにある橋の上で足が止まった。
高さのある大きな橋にはたくさんの車が行き交って、けれど、人通りは少なかったから、あたしはその袂で話を切り出した。
「あのさぁ、あたしがムカつくんだったら、あたしにハッキリ言いなよ。関係ない人を巻き込むのは絶対間違ってる」
奈々ちゃんはあきらかに不機嫌な表情を浮かべてうつむいたままでいたけれど、やがて心の内を話し始めた。
「あたし、ヒーローぶる人って嫌いなんですよね。結局は人間なんてみんな自分中心なのに、奥戸さんはそうじゃないみたいな顔をして、ヒーローぶったじゃないですか」
あたしはキツくならないよう意識した声で反論した。
「あたしは一切、そう言うつもりじゃなかったよ」