小さい頃に習うこと、大きくなってわかること
本当はもっともっと反論したかったけれど、こう言う類の言いがかりは言えば言うほど、絡まってしまう。
だからその一言で反論はおしまいにしておいた。
あたしがしゃべらないことを知ると、奈々ちゃんはバカにしたような笑いを浮かべて、一方的にしゃべり始めた。
「奥戸さん、まさかいじめはいけないこととか、思いやりを持ちましょうとか、まだ守ってたりしませんよね?そんな小さい子が習うようなこと、実際にやってる大人なんていませんよ。自分の居場所を守るためにはいじめを一緒にやることも必要だし、思いやりを捨てることも必要。この世は思いやりなんて甘いこと言ってたら、他の奴に潰されて終わるだけです。時には人を犠牲にすることも必要なんですよ」
世界がグラッと揺れた気がした。
どこかで聞いたその言葉に、目の前が絶望で染まっていく。
奈々ちゃんは最後に今まで聞いたことのない冷たい声で言った。
「ホントムカつくんだよ、あんた」
その次の瞬間だった。
彼女は突然、あたしの首に掛かっていたクローバーのネックレスを引きちぎった。