小さい頃に習うこと、大きくなってわかること


そして、あたしが何の対処もできないうちに、それを道路に向かって投げ捨てた。


あたしのすべてを投げ捨てた。


奈々ちゃんにはいつだったか、そのネックレスがどれだけ大切なものかを話したことがあった。


それを今、心から後悔したけれど、もう遅い。


タイヤに轢かれてボロボロになったクローバーは、想像することすら嫌だった。


四つ葉が三つ葉になってしまったように、今度はネックレスまで消えてなくなってしまったら…。


気付いたら道路に飛び出していた。


大型トラックがすごいスピードでネックレスに迫っている。


たかがネックレスだと言うことも頭の中にはちゃんとあった。


それでも、もうこれ以上、大切なものを失いたくない気持ちの方が強かった。


あたしの体がどうなろうと、ネックレスには傷1つ付けさせない。


転がっていたネックレスを掴むと、その手を覆うように体を曲げて、ただぎゅっと目を閉じた。


鳴り続けるクラクションは耳が痛くなるくらいまで近づいて消えた。




ねぇ、アイチ。


これでまた一緒にいられるかな。



< 38 / 312 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop