小さい頃に習うこと、大きくなってわかること


そして、そのまま少し歩き出したけれど、すぐにあたしが付いていかないことに気付いて、ブレーキをかけると、振り返った。


あたしは何も言わずに、ただアイチのことを見た。


灰色のカバーが掛けられたバイクの横、午後11時2、3分前に完了させているスタンバイ、熱い視線。


きっとアイチにはあたしの言いたいことがちゃんと伝わったんだと思う。


彼女はそのまま何も言わずに、またゆっくりと自転車を引きながら歩いて行ってしまう。


それがアイチの答えなら、こっちからしつこく頼み込むしかない。


「バイク、乗せて!」


アイチはまた振り返ると、ベーッと舌を出してから言った。


「嫌!」


「何でよ~。もういい加減、乗せてくれたっていいじゃん!」


「置いてくよ~」


そう言うと、アイチはサドルにまたがり、進行方向に広がる駐車場に出て行ってしまう。


「あ、ちょっと!」


慌てて追い掛けると、ゆらゆらと動く荷台に飛び乗った。


「ねぇ、バイク乗せてよー」


それを聞き飽きているアイチは、こっちに振り返ることなく、面倒くさそうに言う。


「今度ね」




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