小さい頃に習うこと、大きくなってわかること
ガールズトーク
湯煙の中に「カポンッ」と、桶の音が響く。
チェリーのお母さんとおばあちゃんが経営する銭湯「華の湯」で、今日もあたしたちはガールズトークを展開していた。
「ねぇ、愛生。この前、駆とデートだったんでしょ?どこ行ってきたの?」
既に湯船に浸かっていたチェリーがそう言って、すぐ隣のアイチを見る。
「えっとねー、バイクで千葉の白子海岸まで行ってきた」
「えっ?駆のバイクで?」
「あたしもバイクで」
あまりにも色気のないデート報告に、チェリーは呆れた視線をアイチに向けた。
「カレカノならちょっとは2人乗りとかしてイチャイチャしなよ」
いや、きっとアイチのことだから、2人乗りで行ったとしてもみんなの前では言わない。
と、あたしは読んだ。
アイチが駆と付き合い始めた高校2年生の夏から今までで、あたしは彼女が惚気たのを一度だって見たことも聞いたこともない。
2人が付き合い始めた当時、あたしはアイチを盗られてしまうんじゃないかとヤキモチを妬いて、距離を置いた。