小さい頃に習うこと、大きくなってわかること


「真海子はもっとプラス思考になった方がいいと思うけどなぁ」


金髪をポニーテールにまとめたシーやんが湯船に入って来ながら言う。


プラス思考…。


確かにあたしは基本的にマイナス思考な人間かもしれない。


「無理にとは言わないけど、早く気持ち伝えてあげた方がいいと思うよ?勝ちゃん、他の女の子に盗られちゃったら嫌でしょ?」


アイチにそう言われて、自分の中に浮かんだ気持ちは明確だった。


「やだ…けどさ」


やだけど、どうすればいいのかわからない。



事の始まりは3ヵ月前、勝ちゃんに告白されたことだった。


その時、あたしはもう勝ちゃんに恋愛感情を抱いていたし、ものすごくその想いは嬉しかった。


ただ、心配していた通り、どうしても自分も同じ気持ちだと伝えることができなかった。


いや、一応、好きだとは言えたんだ。


けれどそれは恋人としての好きじゃなく、友達としての好き。


突然の告白に焦ったあたしは、真剣な勝ちゃんの告白を友達としての好きにすり替えて、「あたしも好きだよ」なんて軽く笑い飛ばしてしまった。


その先に起こったことはまだみんなにも話せていない。



< 55 / 312 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop