小さい頃に習うこと、大きくなってわかること
2人が帰って来なくなってからは、あたしの席は荷物置き場になって、その隣にある誰の物でもなかった席が、あたしの新しい席になった。
今ではそこも、ご飯を食べる時ぐらいしか使わなくなっているけれど。
冷蔵庫から麦茶を出してコップに注ぐと、四角いテーブルの横を素通りして、その先にあるソファに座った。
丸くて低いガラスのテーブルの上にあるリモコンを取って、テレビの電源を入れる。
とくに見たい番組はなかったけれど、ここにいる時は大抵、テレビをつけている。
家族の残像がチラつく部屋に1人残されたあたしには、戦わなきゃならないものが普通の人よりちょっと多いんだ。
適当にチャンネルを回してみたら、一局だけバラエティー番組を放送していたからそれにした。
リモコンをテーブルの上に戻して、ソファに全体重を預ける。
やっていたのはクイズ番組らしかった。
明るい音楽に乗せて、画面には答えを考えている芸能人の顔が次々と映し出されていく。
それを見ながら、寝るのは今か後かを考えていた。