小さい頃に習うこと、大きくなってわかること
その時はまだお母さんが側にいて、一緒に手をつないで出かけた。
何度も誉めてもらった。
何度も抱きしめてもらった。
だから、お父さんから、お母さんはもうここには帰って来ないと聞いた日、あたしはトロフィーを段ボール箱の中にしまったんだ。
そして、子どもスイーツコンクールで優勝したパンケーキも、その日から作らなくなってしまった。
けれど、今、トロフィーはここに飾られている。
高校1年生に上がった春からずっとここに飾られている。
その年、あたしはお母さんに会うことができた。
連絡先を知りながら、何年も連絡できないでいた。
けれど、やっと会うことができた。
だからここにトロフィーを飾ることができたし、パンケーキを作ることもできるようになったんだ。
もう一生飾ることはないと思っていた。
けれど今、そこでピカピカ輝いていられるのは紛れもない、かっこいいショートヘアーのおかげだ。
こんな風にトロフィーを飾らせてしまうところは本当にかっこいいんだ。
自然と笑みがこぼれていた。
テレビを消すことに、何の抵抗も感じなくなっている自分がいた。
そのままテレビを消すと、ベッドに入るため、ソファを立った。