小さい頃に習うこと、大きくなってわかること


もちろん、あたしには夢がある。


あるけれど、本当に大切な夢だからペラペラとしゃべりたくはないのが本心だ。


けれど、今のこの状況で「ありません」と言う気にもなれなくて、あたしは手短に言った。


「立派なパティシエになって、友達とドッグカフェを出すんです」


語ればもっと深いけれど、ここで語る気分にはなれない。


「じゃあ、真海子がスイーツ作って、友達がホールだ」


「はい。その友達は今、ドッグカフェで働きながらドッグトレーナーになるための学校にも行ってるので、カフェの中でしつけとかの相談もできたらいいなとか思って」


気付くと少し語り始めている自分がいた。


慌てて口を閉じる。


「すごいね。応援するよ」


進藤さんは一旦、箸を置くと、パチパチと拍手をしてくれた。


「ありがとうございます」


「絃ちゃんも喜ぶね。大岩(おおいわ)先生も」


そこまで言って、進藤さんはハッとした。


その後で一度、手をパチンと叩いてからあたしを見る。


「そうだ。この前、大岩先生が来たんだよ?」



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