小さい頃に習うこと、大きくなってわかること


その瞬間、自転車は突然、急ブレーキをかけた。


状態が前に押し出される。


アイチの背中にそれを受け止めてもらってから彼女の視線の先を見ると、斜め横を高校の後輩の多部(たべ)ちゃんが歩いていた。


「多部ちゃん」


アイチがそう声をかけると、多部ちゃんはこっちを見て驚いた表情を浮かべた。


「先輩!」


セミロングの黒髪に、モノトーンのトップス。


私服姿の多部ちゃんは、学校で見ていた時よりずっと大人っぽい。


アイチが気付かなかったら、あたしは素通りしてしまっていたと思う。


そう言うところに気付くのが、アイチのすごいところでもある。



多部ちゃんはアイチだと気付くなり、まるで子犬のように彼女の側に寄ってきた。


「愛生先輩、お久しぶりです~」


アイチのファンクラブに入っていた多部ちゃんは、本当に彼女のことが大好きだ。


バスケ部の先輩でもあるアイチのことを本当にリスペクトしていると何度も熱く語っていた。



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